新人看護師のとき、わたしは「向いていない」と何度も思っていました。ほとんど毎日だったと思います。
手技がうまくできない。報告するのが怖い。同期と比べて落ち込む。そのたびに、自分はこの仕事に合っていないのではないかと考えていました。
いま同じように感じている方に、当時のわたしが知りたかったことを書きます。
また、うまくいかなかった理由をいくつかに分けて整理していきます。
初めに言っておくと、辞めることを勧める・残ることを勧める記事でもありません。こういうパターンもあるんだな、くらいに思ってもらえたらと思います。
留置針が入らなくて、本気で辞めたいと思った日
新人の頃、手技が思うようにできませんでした。
何かうまくいかないことがあるたびに「向いていないから辞めたい」と考えていました。
ある日、留置針がうまく入らずに苦戦していたことがあります。血管が蛇行していて、いけたと思ってもスルッと逃げられてしまう。。
焦っている自分の手元を見ながら、「どうしよう」という気持ちでいっぱいでした。
そこへ先輩が様子を見に来て交代してくれました。
先輩は私と変わるやいなや、その蛇行している血管に一発で針をすっと入れていました。
その姿を見て、わたしは「ああ、やっぱり自分には向いていないのかな」と落ち込みました。情けないような恥ずかしいような、いろんな感情が入り混じっていたと思います。
ただ、そのあと先輩から声をかけてもらいました。
「最初はそんなもんだよ」
短い言葉です。それでも、あのときのわたしにはとてもうれしくて、もう少し頑張ってみようと思えました。今でも覚えています。
「向いていない」の中身は、一つではないかもしれない
いま振り返って思うのは、あの頃わたしが感じていた「向いていない」の中には、いろいろなものが混ざっていたということです。
先ほどの留置針の話のように手技ができないつらさ。他にも「報告が怖いという緊張」、「同期と比べたときの自身の遅い成長」。
全部まとめて「向いていない」という一つの言葉にしていました。
でも、これは同じ問題ではありません。
手技は回数を重ねると上達する部分がありますし、報告のしづらさは相手や環境の影響を受けます。同期との差は、配属先や任される順番によっても変わります。
ひとまとめにしていると、どこから手をつければいいのか分からなくなります。
分けて見るだけでも少し考えやすくなるのではないでしょうか。
経験が追いついていないだけのこともある
新人の頃、一人で動く場面が増えてくると不安が消えなくなりました。
確認や処置をするたびに「これで合っている?」と思って手が止まるんです。
自分の判断に自信が持てませんでした。
ほぼ合ってると分かってるときでさえ、セルフダブルチェックしてるときもありました笑
誰かに見ていてほしいけれど、いつでも見てもらえるわけでもない。
「独り立ちしなければ」
そんな気持ちで働いていた時の時期が、個人的にはいちばん苦しかったです。
これを当時は能力の問題だと思っていました。
デキる人は、教えてもらっている時期から一人立ちの時期の中間がないイメージだったので…
でも、判断に迷わなくなるには迷いながら数をこなす時間が要ります。
その時間の途中にいるとき、自分だけが分かっていないように見えるのは自然なことだと思います。
「経験不足だから我慢して続けていこう」という話にしてしまうと、自分で自分を追い込んでしまいがちです。
独り立ちできるまでは、全然先輩看護師に聞いていいです。
というより、1人で動けるようになったとしても、場合によっては周囲の方に相談したりすることって普通にあります。
もしこれが中々できない環境なら、あなたのスキルがどうこうだけでなく「働く環境」にも原因があるのかもしれません。
でも、そこにきづかず自分のせいにしてしまいがちなんですよね。。
報告が怖いのは、能力だけの問題ではない
わたしは、先輩に怒られるのが怖くて報告が遅れることがありました。
そして、報告が遅れたことでまた注意されます。
注意されるからもっと言いづらくなって、また遅れる。
この繰り返しになっていた時期があります。自分でも悪循環だと分かっていたのに、抜け出せませんでした。
これは今考えると、わたしの性格だけの話ではなかったと思います。環境の要因もあると今なら思います。
報告しやすいかどうかは聞く側の反応にも左右されます。聞いたらすごい圧で「なに?」みたいに返してくる人もいますし。。
相手の受け止め方や返答の仕方で「次聞くの嫌だな」となることは結構みなさん経験あるのではないでしょうか?
だから、報告が怖いという状態が続いているなら、自分の気の弱さだけで説明しないほうがいいかもしれません。
誰になら聞けるのか、どの場面なら言いやすいのか。そこを見ていくと、能力の問題と環境の問題が少し分かれてきます。
同期と比べても、自分の適性は決まらない
同期と比べるのも、当時のわたしにはつらいことでした。
夜勤の独り立ちが早い同期がいます。手技が上手に見える同期もいます。
「あの子はできるのに」と思って、よく落ち込んでいました。
でも、比べていたのは結果の部分だけでした。
どの患者さんを受け持ってきたか、どのタイミングで何を任されたか、誰に教わってきたか。そういう条件は一人ずつ違います。見えているのは表面だけで、そこから自分の適性を判断するのは難しいと思います。
比べてしまう気持ちがなくなるとは言いません。
わたしも当時は止められませんでした。ただ、比べた結果として出てくる「向いていない」という結論は、根拠としては弱いのではないかと今は思っています。
転職を決める前に整理したい3つのこと
つらさの原因は、大きく分けると次の3つのどれか、あるいはその組み合わせだと考えています。
1. 経験がまだ追いついていない
手技や判断に不安がある、任される範囲が広がるたびに怖い、という状態です。
時間とともに変わっていく可能性がある部分です。
見分ける目安として、少し前の自分と比べてみるという方法があります。
半年前にできなかったことが今はできているか。ゆっくりでも動いているなら、経験が積み上がっている途中かもしれません。
2. 教育方法や人間関係が合っていない
教え方が自分に合わない、質問できる相手がいない、聞くと機嫌が悪くなる人がいる、といった状態です。
ここは自分の努力だけでは変えにくい部分です。
同じ人が別の職場では問題なく質問できている、ということも起こります。
「自分が悪いから聞けない」と決めてしまう前に、環境側の条件を見てみてください。
3. 職場環境や働き方が合っていない
業務の速さ、夜勤の負担、扱う疾患や処置の種類。
このあたりが合っていない場合もあります。
看護と一口に言っても、働く場所によって求められるものはかなり違います。
急性期の速さが合う人もいれば、同じ人にじっくり関わる働き方のほうが力を出せる人もいます。どちらが優れているという話ではなく、単純に性質が違います。
今の職場で変えられることを先に確認する
原因を分けてみたうえで、まず今の場所でできることがないかを見てみてください。
転職だけが選択肢というわけではありません。
たとえば、こういうことがあります。
教育担当者に、具体的に困っている場面を伝えてみる。
「できません」ではなく、どの場面のどこで手が止まるかを言葉にすると、相手も対応しやすくなります。
私は幸いにも教育担当者2人いたうちの一人がかなり相談しやすかったので、救われた部分が大きかったです。
教育担当者以外でも質問しやすい相手が一人でもいれば、困ったタイミングで聞いてみるのもいいかと思います。
もちろん、相談すれば必ず状況が変わるとは限りません。
伝えても取り合ってもらえないこともありますし、そもそも相談できる空気感がない場合もあります。。
ただ、それはそれで「新人が質問しづらい現場」だと分かるので、今後の身の振り方の判断材料になると思います💦
職場を変えるのは看護師を諦めることではない
変えにくい部分が多いと分かったときに、働く場所を選び直すという方法があります。
新人のうちに職場を変えることを、「逃げた」と感じる方もいると思います。
わたしも当時ならそう考えたかもしれません。
ただ、看護師を辞めることと、今の職場を離れることは別のことです。
一方で、場所を変えれば全部解決する、とも思いません。
行った先で別の合わなさが出てくることもあります。だからこそ、いま何が合っていないのかを自分の中で整理してから動くほうが、次を選びやすくなります。
そうすると、例えば相談ができる転職エージェントに状況を伝えながら失敗しない転職を目指すことも可能ですね
転職先を見るときに確認したいこと
もし職場を探すなら、新人の時期はとくに教育まわりを見ておきたいところです。
すべての職場に同じ制度があるわけではないので、、
聞いておきたいのは、たとえば
- 教育担当者は誰(〇年目の先輩ナース etc)になるのか
- 日常的に相談しやすい環境か
- 経験に応じて任せる仕事が増えていく流れがあるのか
- 夜勤はいつ頃から始まるのか
- 独り立ちをどう判断しているのか
- 勤務中に質問や確認ができる体制になっているか
- 残業はどのくらいか
- 時間帯ごと(日勤・遅出・夜勤 etc)に何人で勤務しているか
それから、見学に行けるならスタッフ同士の話し方を見てみてください。
忙しい場面でどういうやり取りをしているか。
困っている人がいたときに、周りがどう動くか。求人票や説明で聞いた話と、実際の空気が合っているかどうかは、行ってみないと分からない部分です。
関連記事:
一人で比べきれないときの使い方
働きながら求人を見比べるのは、思っている以上に時間がかかります。
数が多いですし、求人票を読んだだけでは教育体制のところまでは分かりません。
そういうときに、転職エージェントに相談するという方法もあります。
希望を整理する手伝いをしてもらったり、求人探しや見学の日程調整を任せたりする使い方です。
使わないと不利になるようなものではないので、手が回らないときの選択肢の一つとして考えてもらえたらと思います。
ひとつだけ書いておくと、紹介された求人へそのまま応募する必要はありません。
探してもらう部分と、自分で確かめる部分を分けるのもアリだと思います(手間ですが..)。
最後は見学や面接で自分の目で見て決める。そのほうが、入ってからの納得感が違ってきます。
まとめ
新人看護師としてうまくできないことと、看護師そのものに向いていないことは、同じではありません。
わたしは留置針が入らなくて落ち込んで、報告が遅れて注意されて、同期と比べて落ち込んでいました汗
当時はそれらを全部まとめて「自分は看護師に向いていない」につなげていました。
今は、そこに経験不足の部分だけでなく、環境との相性の部分が混ざっていたのだろうと感じています。
いま苦しい方に伝えたいのは、自分の努力が足りないという一つの答えに急がなくていい、ということです。
仕事内容、教育環境、人間関係、勤務条件。これらを分けて見ると、変えられるものと変えにくいものが見えてきます。
今の場所で相談してみるのも、異動を考えるのも、場所を変えるのも、どれもありだと思います。どれを選ぶかを決めるのはご自身です。この記事が、その整理の材料になればうれしいです。
なお、眠れない日が続いていたり、気持ちが落ち込んだ状態が長く続いているようでしたら、職場の産業医や相談窓口、医療機関を頼ることも考えてみてください。働き方の話より先に、そちらが大事になる場面もあります。